半生
肉体はいつかの若さだけを取り残して、精神は屈折し疲れ果てた変な老人になってしまった。この相互の軋み合う感覚がいつまでも私の内の深い部分に根を下ろし、指針のように時を刻み続けている。
『夢現』
「私、おかしな夢を見ましたわ。」
と、言った葉子は静まり返った暗闇のなか、ベッドの上で徐に裸体の身を起こした。
「夢…?一体どんな夢を見たっていうんだい。」
と横から覗き込むようにして倉谷が不思議そうに聞き返した。カーテンの隙間からは月明かりが仄かに部屋を照らしていた。窓の方を見つめる葉子の後ろ姿は暗くて判然としない。だが、葉子はどこか儚げな印象を描くように華奢で柔和な形状の体つきであり、艶やかな長髪の滴りかかったその前方には調和のとれた小じんまりとした乳房が保たれてあり、すらりとした脚には月明かりと相まった美しい肌の白さが如実に表れていた。
「私が死んだ後の世界ですわ。」
葉子はそう答えると、一旦踏みとどまり、気を持ち直してまた歩みを進めるかのように長々と語り出した。
「死んだ後、私は川の畔に立っていて川岸の向こうには人影が見えましたの、現れたその人は…、今となっては懐かしい人でして……あれが三途の川かしら。橋が掛かっていて普通は渡るんでしょうけど。でも、私、川の流れてくる先がどこに繋がってるのか途端に気になり出して、手招いていたその人には申し訳ないけど無視して川沿いを歩いていきました。沢山の草花が生い茂っていて河原には小石が積み上げられていたのをよく見かけましたわ。いつの間にか辺りは仄暗く深い森に囲まれていて、たしか…何かに導かれて夢中で歩き続けていたかしら…。やがて、さざ波の音が聞こえてきて右手には何艘か渡し船が見えました。あらゆる事物を包み込んでしまいそうな黄昏の空と白波の立った荒れた海、陸では何かを囲んで群衆の列が果てしなく続いていましたわ。本当に私、驚きましたの。怪しく思いながらも並んでみることにしたけれど、あることに気付きました。一つ前で並んでる人の容姿が私と瓜二つなんですもの。どうやら誕生してから死ぬまでの“私”が並んでいる様でした。他の人も同じではないかしら。霊魂になった私って一体いつの時代の“私”をいうのでしょう。列の真ん中には大きな白い椅子とそこに座っている一人の人物が見えました。一目見てなにか…神聖で…侵すことのできない存在なのかもしれないと思いましたの。あの光景が異国で信じられている最期の審判というものかしら…。異国の信仰について詳しいことは私、存じませんわ。でも、生まれてから死ぬまでの年齢の“私”がその列に加わっているんですもの。その審判を受けるまでの間のことを思うと私、気が遠くなるような心地がして、そこから逃げ出したんです。走っている間、なにか背徳のような心が芽生えましたわ。そして何者かに追われているような気にもなって…、私、来た道を必死に引き返しました。すると、そこで目が覚めましたの。」
葉子はここまで語った後、ベッドに横たわり再び眠りに着いたのである。朝、目覚めると倉谷の傍らに眠っていた筈の葉子の姿はなかった。倉谷は暫くぼんやりと佇んだままだった。それまで滞っていた血流が再び活動し体内を巡り巡ってゆくように彼が正気を取り戻すまでには多少の時間を要した。彼女を喪ってから一年が経過していた。窓越しに外を眺めると、紺碧の空は高く位置し遠くまで澄み渡っていた。風が微かに吹きつけて揺れ動いた白樫の若葉が一枚舞い落ちてゆく光景が倉谷の瞳に何処となく鈍重に映り込み鮮烈な印象を与えた。時の流れが恰もその須臾の為に遅れていたかのように。数日前までさんざめいていたほどの蝉時雨はいつしか陰を潜め、物淋しげな蜩の鳴き声が控えめに響き渡り、倉谷の哀愁を誘いつつも初秋の訪れを告げていた。
ミニチュアSW
バンダイ製のSWビークルシリーズ製作。これは掌サイズのミニチュアなプラモシリーズ。
第一弾、墜落しているスターデストロイヤー。惑星ジャクーのシーン、ep7。
肝心のスターデストロイヤーさんは殆ど砂漠の波に埋もれていて味気ないので、ちょこんと添える申し訳程度の草花を。適当にとの粉を盛り付けたけど砂漠って何でやったらいいんだろ…。あんまりこのシーンのジオラマやってるブログを見かけないんだよ、私ぐらいか?
第二弾、ミレニアムファルコン。掌サイズでこの緻密な造形には本当に感嘆を禁じ得ないね。墨入れとウォッシングで本当に活き活きしてくるんだよ。
第三弾、AT-M6(全地形対応メガキャリバー6)。新惑星クレイト、ep8。
背中に乗せている米俵みたいなのはメガキャリバー6キャノン。ゴリラをイメージしているらしい。前足が確かにゴリラっぽいかも。一面真っ白な地表から噴き出す赤々の粉塵と煙のシーンは印象深かったけど、あれはボリビアのウユニ塩湖で撮影が行われたらしい。今は結構有名だろうし、納得。100均の綿を着色したもので再現。
でわでわ。
ロボット兵、再び……
『凄まじい破壊力を持ったロボットの兵隊だよ』『この体が金属なのか、粘土なのか、それすら我々の科学力ではわからないのだ』
ムスカの台詞にある言葉を頼りにファインモールドのロボット兵を製作。キットは多少それっぽいモールドがあるがもう少し鋳造表現みたくしようとベッタベッタと荒々しくパテ塗りをしてから塗装開始。下地にはガンメタルで塗装。上からカッパーや茶系色でドライブラシ。後はああでもないこうでないと試行錯誤で色を足していって完成。
昔一度作った事があったのだが(画像なし)、もう一度作りたくなるぐらいラピュタのロボット兵はかっこいいということなんだね。やはり手足の間接がはめ込み難くくて昔もこれに苦戦していたことを思い出させてくれた。
腕に生えた爬虫類のような棘、虫のように規則的に動き出す四肢の間接、それでもシンプルさを失わない人型の形状を保った古代兵器。ウ~ム。
チャオ。
駆けよ、不動の虎よ
やや久方振りに更新。ブログ更新していない間もしこしことプラモ製作に勤しんでいたのだ。といっても作っては放置、塗装しては放置していたのでなかなか仕上がらずにいた。今回はWW2時のドイツ軍重戦車、Ⅵ号戦車ティガーⅡ タミヤ製を製作。
ティガーⅡはWW2当時、砲撃威力や装甲防御力ともに最高レベルで最強の戦車といえる存在であったが、燃費や機動性の悪さ、故障なども多かったようである。敵が来たら撃つ、重量級の不動の虎である。荒々しく大地を駆け抜くような虎ではない。
ティガーが虎なら、T-34はデカめの犬ぐらいの大きさだろうか。
油絵を模型に初めて使って見た。もう最後は「ええい、泥で汚してしまえ」という心持ちになって何だか汚くなってしまったけど。
でわでわ。
戦場で駆けるゾンビ
20XX年、フランス北西部に位置するノルマンディー地方はかつて無い脅威に曝されていた。この地は温暖な気候に恵まれており、豊富な農作物や海産物が穫れ、またリンゴを原料としたシードルやカルヴァドスといった林檎酒の名産地としても知られていた。だが、第二次世界大戦が始まるとやがて戦火に巻き込まれ、数多くの戦没者が生まれた土地でもあった。当時、ナチスドイツ軍の侵攻を受けていたソ連軍の要請があり、独側の占領下にあったノルマンディーに向けて連合国軍による上陸作戦が行われた。戦争映画『プライベートライアン』の冒頭シーンではオハマビーチでの銃撃戦の凄まじさが私の脳裏に焼きついている。
ここからは上陸からパリが解放された後の物語(創作)である。いまでは誰もがご存知の通り、ナチスドイツではユダヤ人に対するホロコーストが行われていた。強制収容所に連れられた人々は人体実験を強制的に受けさせられた。被検者は死亡もしくは障害を負わされたが、秘密裏に生物兵器としてのT-ウイルスの研究が進んでいた。ある日、何者かによって施設内でT-ウイルスが漏洩し、拡散。感染した内部の者がゾンビ化し、結果的にウイルスは街にまで蔓延した。そう、このプラモデルは『バイオハザード』である。しかし、本家ではなく、バイオハザードもどきであると言わなければならない。主人公アリスに似た謎の女戦士とゾンビの戦いの物語なのである。
謎の女戦士は生まれも育ちもなにもかも謎に包まれた人物である。顔はともかく出で立ちはアリスにひどく似てやしないか。(色はそれっぽく似せた。)
謎の女戦士が乗っているバイク、これはノルマンディー上陸作戦時の米軍のものであると窺える。(悲しいかな、パッケージに女戦士と共に描かれているバイクはどこにも入ってなかった為、イタレリ社のやつを採用。)
では、次にイかれたゾンビ共を紹介をしたい。
口から触手のようなものを出しているのはサイコパス体育教師 ダニエル。
嫌がらせ大好きお局ナースのバーバラ。
会社員、パワハラ上司 カール。
街の奇人、清掃員 アマンダ。
以上、映画などではムカつくので大概殺されるか散々な目に遭わされるというタイプの面々だ。ゾンビになっても仕方がない。だが、ゾンビ風に塗装しないと変なポーズを取ったただの市民になる。
ゾンビ「アアア…」
急に全力疾走し出すゾンビ「ウァァァァ”!!!」
マスターボックスはあまり知らなかったのだけど、ほんとに良い意味で変で妙な商品も豊富で面白いとおもった。