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浮き草

 本を買う際はパパパッとすぐ買える専らKindleに依存してしまっている堕落したKindle信者の私だが、たまにふらりと書店に立ち寄ってみたくなる。学生時代はよく書店に赴いたものである。

 たまたま手に取った新書本をちらりと捲ると、“郷愁”と“居住”を同じものだと考える勿かれと、戒めの類いが書かれてあった。私はハッとした。前職の時に都会での暮らしにせわしなさや孤独感といったものに嫌気が差していた私は転職を機会に帰郷を選んだのであった。まさしく故郷に対する郷愁の念に駆られていたのである。郷愁から居住に至ったわけだが今思うと郷愁とは幻想そのものだった。田舎の故郷が遠くにあるからこそ風景が想い出され、望郷が生まれるのだと感じた。どうやらノスタルジックな感傷に浸り過ぎたようだ。浮き草の私はいまどこに向かっているのだろうか。現実から目を背け続けるべきではないことはわかっている。